地球について知る(地球の現状)

もう少し具体的な話をしましょう。

地球規模で作動するシステムには3つの巨大なものがあります。その3つは地球全体の状況を調整する非常に重要なシステムで、すでに把握されている転換点を持ちます。その3つとは1.気候システム 2.オゾン層 3.海洋です。

1. 気候システム

気候システムは、海と陸、氷床、大気、そして豊かな生物多様性を結びつけています。

地球の平均気温は、過去1万年の間で上下にわずか1°Cしか変動していないことがわかっていますが、現在地球の平均気温は、1.1°C上昇しており、1°Cから2°Cの気温上昇の間に、地球がいくつかの転換点を越えるだろうと予測されています。過去20年間に起きた記録的な高温、驚異的な氷の融解、サンゴ礁の死滅、アマゾンの炭素収容量の減少など、その影響が見え始めています。

科学者たちの研究を基に、2015年、各国首脳はパリで会談を開き、地球温暖化を2°C未満に保ち、できれば1.5°C以下を目指すことで合意しました。

2. オゾン層

地球の保護シールドであるオゾン層は、太陽からの有害な紫外線を吸収することで地球上の生命を守っています。オゾン層がないと、放射線は植物や動物、人間のDNAを傷つけ、皮膚がんも引き起こします。1980年代に、人類が新しい種類の化学物質を発明しそれが大気中の高いところで漂いオゾン層破壊危機の寸前まで陥ったのですが、1987年に「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が採択され、今は安定しています。

オゾン層は、ドブソン単位(DU)で測定され、限界値が275DUに定められています。

3. 海洋

海は地表の70%を覆っています。とても広大で、一見無限に見えるので、ゴミを投げ入れてもどうにかなるだろうと、簡単に考えがちですがそうではありません。確実にダメージを受けています。

海は大気と海面の間の熱交換を調節し、生物多様性の豊かさを支え、栄養素の流れと水の循環を調節しています。機能的で安定した状態の海は、機能的で安定した状態の地球の前提条件です。海は化石燃料を燃やして発生する熱の93%を吸収してくれています。

海洋においては酸性化を止める必要があります。化石燃料の燃焼による二酸化炭素排出の結果、海洋の酸性度は、産業革命の開始以降、26%の上昇という落胆するほどの変化を示しています。

現在の海洋酸性化は、これに次ぐ唯一の海洋酸性度上昇を経験した、5500万年前の焼新世に比べて、速度はとても速く、この状況が長く続くと、結果は間違いなく壊滅的なものとなります。石灰化を起こす植物プランクトンや、サンゴやカキなどは、硬い殻や炭酸カルシウムの骨格を成長させることが難しくなります。カキ養殖者はすでにこの影響を受けており、サンゴに至っては、熱波、海洋酸性化、海洋汚染の増大で死にかけています。

現時点では、地球は海洋酸性化の限界値内にとどまっていますが、現実的に考えて、海洋の酸性化を止める唯一の方法は、化石燃料からの排出物を減らすことです。

この3つのシステムと密接に関わっているのは、生物圏の4つの境界(生物多様性、土地、淡水、栄養素)です。とはいえこれらの境界を超えると、地球規模で転換点を超えるという強力な化学的根拠があるわけではありません。しかしそれでも、生物圏の境界は極めて重要です。ここでは詳しく語りませんが、興味が湧いた方は、是非調べてみてください。

オーウェン・ガフニー, ヨハン・ロックストローム.『地球の限界 温暖化と地球の危機を解決する方法』. 戸田早紀訳. 河出書房新社, 2022, 379p